今回は、これからの季節にぴったりな絶景ドライブコースをご紹介します。
北海道は5月から本格的な観光のシーズンを迎えます。梅雨がないといわれる北海道は、この時期とてもさわやかなんです。そんなさわやかな風に吹かれながらドライブと廃線めぐりなんてステキですよ。
お楽しみに。
北海道でも屈指のドライブルート国道273号線
国道273号線は、北海道の帯広から紋別までを一気に縦断していく道路です。今日はそのコースの中から層雲峡(そううんきょう)付近から上士幌町(かみしほろちょう)付近の行程を紹介します。
このルートは、北海道の背骨ともいわれている大雪山系の東側を抜けて行きます。ちょうど富良野の裏側のコースですね。層雲峡→大雪湖→三国峠→糠平(ぬかびら)湖と景観スポットをいくつも超えていく上に、旧国鉄の廃線めぐりが楽しめて、道も峠道ながら広くて走りやすい、という最高のルートですよ。
旭川側からも帯広側からもちょうど真ん中の地点にあるので、アクセスのしやすい方から走ってみてはいかがでしょう?今回は、旭川側、層雲峡付近から南下するルートです。
では、早速スタートしましょう!
北海道の大自然をぬける三国峠
層雲峡を走る国道39号線から右にそれて帯広方面に向かうと、今回のコースの始まりです。
三国峠までの道のりは、カーブもそれほどキツくなく、道幅も広いので快適にドライブすることができます。大雪湖を抜けて1時間弱で三国峠に到着です。
ここ三国峠は、南側にある展望台より見渡す限りの原生林を眺望できます。白樺の森を抜けて頂上に出ると、写真のような絶景が広がります。北海道の国道の中で一番標高の高い場所で、その高さ1,139m。5月の終わりから6月にかけては新緑が、9月の終わりから10月上旬にかけては見渡す限りの紅葉が広がります。
ここは大雪山国立公園の中にあります。緑の濃い色はトドマツやエゾマツ、黄緑色は白樺で、その色の対比もとてもキレイですね。景観とともに、松見大橋のアクセントもとてもすばらしく、またカフェもあるのでのんびりできる三国峠です。
旧士幌線で廃線めぐり
三国峠を越えると、なだらかに道は下っていきます。
ここからは、旧国鉄士幌(しほろ)線の廃線めぐりをしてみましょう。
旧国鉄士幌線は、帯広駅から今の糠平(ぬかびら)湖の少し北側にある「十勝三股(とかちみまた)」までを結んでいた線です。国鉄がJRに切り替わる直前の1987年3月23日に廃止になりました。
この線は、途中の糠平から終点の十勝三股までが最初に事実上の廃止状態(長期間の運休)になり、それを追って全線が廃止になったんですが、運休区間が約10年という間運休が続いたこともあり、線路は草木に埋もれて木が生えてしまう、という状況となってしまったそうです。
さらに、多数存在しているアーチ橋の劣化等といった物理的要因が重なり、全線廃止後も至る所で施設を放置するしかないという状況になってしまいました。ですが、周囲の景観の良さも含めて今では廃線めぐりの名所となっているんです。
三国峠方面から下ってきて最初に表れるのが、第五音更川橋梁です。
ここは、近くに駐車場があり車を止めてゆっくりと観察することができます。
国道から少し入った所には、橋のすぐ近くまでアクセスできる道があります。橋の上は、危険なため立ち入ることはできませんが、当時の橋梁そのまま残っています。周りの緑の景色と、流れる川と、アーチ型のコンクリート橋がとても美しいですね。
この第五音更川橋梁は、全長109mと大規模な橋で、10mアーチ6連、23mアーチ(川をまたぐ部分)、そしてさらに10mアーチの合計8連アーチでできています。1938年に完成したこの橋は、国指定登録有形文化財に登録されていて、鉄筋などが入っていない純コンクリート製なんだそうです。
また、その橋からまっすぐ伸びるように旧線路跡が続いています。ここは遊歩道のように開放されていて、白樺の間を爽やかな風をうけながら散策することができるんです。この道をすうっと歩いて行くと、まもなく旧幌加駅が見えてきます。
この旧幌加駅は、線路が当時のまま残り、ホームも現存しています。辺りには草木が生い茂っていますが、当時の様子をしのぶことができる貴重な場所といえるでしょう。
この駅がまだ現役だったころは蒸気機関車が全盛のころ。
この付近は勾配がきつく、当時の難所だったと言われています。
北海道遺産タウシュベツ川橋梁
さて、しばらく探索を楽しんだらまた車で南下していきましょう。しばらくして左側に糠平湖が見えてくると、第1回北海道遺産に登録された「タウシュベツ川橋梁」を見られるスポットとなります。
手前に見える糠平湖は川をせき止めて作られた人造湖です。
1955年(昭和30年)に湖(発電用ダム)が完成し、この橋梁付近は湖底に沈むことになりました。旧士幌線は、湖の手前側に新しく線路をひいたのですが、この橋梁自体は線路がなくなった後も湖の中にそのまま残されることとなったそうです。
湖は発電用に使われているため、水位が激しく増減します。5月頃から水がたまり始め、9月頃〜10月頃には満水になります。その時、この橋は完全に水没して見えなくなるんです。そのため、「幻の橋」などと呼ばれています。
写真を撮ったスポットは、国道273号線から少し入った場所にある展望スポットです。国道沿いにちょっとした駐車スペースがあるのでアクセスは難しくないのですが、そこから結構深い森を進む必要があります。ミズナラの大木も迎えてくれました。
この橋が竣工してすでに約80年。
よく見ると、湖に沈んだり顔を出したり、といったことを繰り返していたためかなり風化が激しくなっています。ですが、現時点でなにか保存の対策をとるといったことはなく、朽ち果てていく様を観察するような趣になっています。まさに、秘境スポットです。
橋のすぐ近くには舗装されていない林道が通っているのですが、車の通行は制限されていて、許可された車しか通れません。歩くことは可能ですが、国道から4㎞ほどあることと、ヒグマの生息地ということもあって、ハードルが高くなっています。
このタウシュベツ川橋梁の近くまで行くには、現時点ではツアーを利用するのが1番現実的なようです。湖の対岸にある展望台も距離があるため、写真を撮るには望遠レンズは必須です。
だからこそ、価値観がありますね。
森の緑と、水の青、そして橋の白い色がとても美しく、一度見たら忘れられません。
コンクリートアーチ橋を探して
この一帯には、同様のコンクリートアーチ橋がいくつも現存しています。
それぞれが趣の異なるアーチと川の対比があり、探すだけの価値があります。上士幌町のガイドによると、このアーチ橋梁は全部で9つあります。紹介した「第五音更川橋梁」「タウシュベツ川橋梁」、そして左の写真の「第三音更川橋梁」、そして下の写真の「第四音更川橋梁」。
紹介したこの他にもあと5つも残っているので、ぜひとも現地に行って探してみて下さい。国道沿いには、案内の看板も出ているので比較的簡単に見つけられるはずです。でも、中にはまったく案内されていない橋もあるのでコンプリートするのは結構難しいですよ。
見る位置によってもその表情を変えてくれるこれらの橋梁群は、不思議と何度も訪れてみたくなってしまいます。興味のある方は「旧国鉄士幌線アーチ橋梁群」で検索してみてはいかがでしょうか?
このようにスポットを探しながらドライブしていると、あっという間に時間は過ぎていってしまいます。糠平湖のダムに沈み行く夕陽も美しかったです。
帰りはそのまま帯広に抜けてもいいですし、ルートは無限大です。
ですがおすすめは、コレ。
三国峠からの満点の星空を見て帰りたいものです。星が降り注ぐ、とはこのことを言うのでしょう。
機会があればぜひ!
とても満足すること間違いなしのご紹介のコース。大自然と廃線の対比を楽しみながら、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。
★今日ご紹介の場所(ポイントをクリックすると場所が表示されます)