日本国内で「北海道でしか見られないもの」を連想した時、なにを思い浮かべるでしょうか?
広大な大地に地平線、どこまでも広がる草原や花畑、何㎞も続くまっすぐな道など、その方によって思い浮かべるものは異なるかと思います。今回ご紹介するのはそんな北海道の冬でしか見られないもの。
そう、「流氷」です。
2016年の北海道の流氷事情
流氷はいつも1月の後半から2月にかけて、オホーツク海の北の方からやってきます。
オホーツク海の流氷は、ロシアのアムール川が発端となっています。川の水が海に流れ込んで塩分が薄くなり、北の低い気温で凍ることによってできあがります。凍る過程でさらに塩分が抜けて大きく育つんです。その氷たちが北風に乗って南下したものが北海道のオホーツク海沿岸で見られるんです。
北海道の流氷は、紋別(もんべつ)や網走(あばしり)、さらには知床付近まで見ることができます。流氷が多い年には、稚内から知床半島をぐるっと周りこんで羅臼(らうす)まで流氷を見ることができるんです。
…そんな流氷なので、とっても天候に左右されます。
ちょっとでも南からの強い風が吹くと沖に流れて行ってしまいますし、そもそも気温が暖かいと流氷がやってきません。今年(2016年)は、北海道は例年より暖かい日が多く、例年よりやってくるのが遅かったんです。それでも、2月の終わりには一部地域でびっしりと接岸する様子を見ることができました。
この時期を待って、早速出かけてみましたよ。
流氷の観光スポットを探しに
私たち最北の海鮮市場がある旭川から、今回の目的地知床までは距離にして約300㎞。雪道を走ることを考慮すると、車で約5時間程度かかる距離にあります。こういったときに北海道の大きさを感じます。
途中から高速道路がなくなり、峠をいくつか越えて、やっとオホーツク海に出ることができました。もうすっかりと日はのぼり、とても良いお天気に恵まれました。
今回の旅は、流氷スポットを巡る旅。
網走近辺から知床半島を目指して行きます。
網走〜斜里間の流氷は、鉄道「流氷ノロッコ号」で。
まず最初に訪れた場所は、「北浜駅」です。
ここは釧路から網走まで伸びている釧網本線の駅。きっと、オホーツク海に一番近い駅です。ここには展望台があって、流氷の様子を見ることができるんです。
しかも流氷がやってくる真冬の時期には、写真の様な観光列車、その名も「流氷ノロッコ号」が走ります。流氷が見えるポイントでは徐行運転をしてくれたり、車内でグッズの販売がされていたり、石炭で暖をとるだるまストーブが置かれていたりと、冬と流氷を体感できて好評です。この日も、ツアーの方を含めて多くの方が乗っていました。
ただし、、、
今年はこのスポットからは遠くに流氷が見られるのみでした。
続いて訪れたのは、斜里(しゃり)の「以久科原生花園(いくしなげんせいかえん)」。
夏はハマナスやエゾスカシユリがたくさん咲く場所なんですが、冬は流氷を眺めるスポットとしてオススメです。駐車場に車を止めて、少し歩いてみると……
先ほどよりは、量が多いようですね。接岸しているものあり、ちょっと沖でただよっているものあり、という感じ。でも例年に比べるとちょっと少なめ。やはり暖冬の影響が出ているようです。
ではもっと多くの流氷を求めて、さらに知床の奥へと向かってみることにしましょう。
流氷を確実にみるなら、斜里〜ウトロがオススメ
この地域は、例年でももっともがっちりと接岸している流氷を見ることができる場所。いわば、一番流氷に会える確率が高い地域となります。斜里から、国道334号線を北上します。
この滝も、真冬には凍りつくことがある位なのですが、今年は勢いよく水が流れていました。夜はライトアップされて、とてもキレイな流れを見ることができるんですよ。ここのオシンコシンの滝は、国道から少し坂を登った所にあります。この付近が、知床でのオススメ流氷スポット1つめとなります。
さて、国道から見てみることにしましょう。
はい!期待通りのがっちり接岸!
この付近は、歩道が整備され、しかも冬でもキチンと除雪されているので安心して流氷を見ることができます。
そしてウトロの市街地。
ここには道の駅やコンビニ、ホテルなどが建ち並んでいます。
ウトロの市街地から、少し高台を登った所にあるのが次のオススメスポット「夕陽台」です。
ここからは、沖まで広がる流氷とウトロの街並み、ウトロ岬やオロンコ岩を眺めることができます。そして、その名の通りの夕陽の絶景としても知られています。その夕焼けの様子は後ほど。
ウトロ市街地を抜けると、国道は知床半島を横断するために奥へと入っていくのですが、その手前に有名なスポットがあります。
あたり一面に広がる流氷と、素晴らしい夕焼けを見ることができるんです。また、この付近では「流氷ウォーク」のポイントでもあります。「流氷ウォーク」は、ドライスーツに身をつつみ、流氷の上を歩くイベントです。選任のインストラクターと一緒に進むので、安心して楽しむことができるんです。
国道を進むと、プユニ岬展望台があります。
ここから見た流氷と太陽は個人的に一番のお気に入り。ぜひ皆さんも足を運んでみてください。
流氷と夕焼けの絶景が楽しめる「プユニ岬」
日中にみる流氷も素晴らしいんですが、やっぱりこれを見ずにはいられません。
それは、流氷の海に沈む太陽です。特に、ここウトロ付近は夕焼けの絶景ポイントなんです。
まずは、プユニ岬展望台からの夕焼け。上の写真の数時間後、ですね。
流氷に映り込んだ太陽と、実際の太陽が重なって、あたかも太陽が2つあるように見えます。流氷がアクセントなって、そのコントラストがとてもステキなんです。太陽が沈んでいく約30分くらいはとても見応えがあります。刻々と変わっていく太陽の色、海の表情が素晴らしいんですよ。その代わりとっても寒い(−10℃以下は覚悟してくださいね)んですが、それでも見たい!景色だと思います。
太陽が沈みきると、また異なった色が表れます。
真っ赤に色づいて、幻想的な姿になります。
やはり夕陽という名前が付いているだけあってとてもキレイ。
市街地の明かりと、岩や堤防のコントラストがまた違った表情になります。
まさにマジックアワー。空のグラデーションがなんとも言えませんでした。
今年はちょっと流氷の数と密度が少なく、非常に見られる期間が限られていました。
取材に訪れたのは2月28日なんですが、その1週間後にはもう流氷の姿は無くなっていました。例年だと1ヶ月くらいは見ることができるのですが、本当に残念。でもこればっかりは自然の贈り物。天候などによって左右されるのは致し方ありません。特に最近は地球温暖化の影響もあり、数十年前と比べても大分少なくなってしまったようです。
こういった北海道ならではの景色がいつまでも見られるように、私たちも努力できるところはがんばろうと思った今回の旅でした。来年もまたきっと来ることを約束して。
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